細胞診専門医、細胞検査士の方へ
第48回甲状腺外科学会学術集会(東京)
2015/10/31
第48回甲状腺外科学会学術集会が伊藤病院伊藤公一会長のもと開催されました。病理が関与する内容として、癌取扱い規約の改定が公表されました。ここではべセスダシステムが甲状腺細胞診に採用されると発表されました。加藤、廣川、亀山先生たちと私の4名の病理医が尽力し、日本で独自に発達した甲状腺診断様式を、The Japanese System(日本方式)として命名し、日本甲状腺学会より発表したのですが、残念なことに、これは採用されず、これと異なるべセスダ診断様式(アメリカ様式)を、癌取扱い規約に採用すると公表しました。The Japanese Systemは、写真の伊藤病院の鳥屋先生が尽力された伊藤病院で発達した診断方式です。伊藤公一会長の主宰されたこの学会で伊藤病院の診療の伝統を否定する内容が公表されたのは、何という矛盾なのでしょうか。日本独自の文化、哲学、診療方針を大切にしてほしいと思いました。しかし公表された内容を見ると、
1)嚢胞は、検体不適として再検査するべセスダ様式は採用しない。2)診断名は直訳は分かりにくいので短縮形を用いる。3)濾胞性腫瘍の診断基準を変更する。4)悪性の確率を示さない。5)臨床的対応を示さない。などべセスダ診断様式と呼ぶことができないほどの多数の重要な変更点を加えたものとなっています。1)2)3)については、どちらかというと日本甲状腺学会の診断様式(The Japanese System)に近いと思われます。また4)5)については、The Japanese Systemはべセスダに準拠し悪性の確率を推定し、臨床的対応にも言及しています。2つの診断様式を比較した時、べセスダに近いのはThe Japanese Systemの方かもしれないと思いました。The Japanese Systemは、べセスダとの互換性を意識し、違いを強調し発表いたしました。癌取扱い規約ではべセスダを意識し、名前をべセスダにしたのですが、結果的には似て非なるものかもしれません。
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覚道甲状腺病理診断室の開設のお知らせ。
2015/09/17
このたび大阪市のすみれクリニック内に、覚道健一甲状腺病理診断室を開設いたしました。http://www.thyroid.jp/thyrocyte をご覧ください。内部の標本だけでなく、他施設の標本についても(有料ですが)、診断、コンサルテーションをお受けする体制をとっています。今までは組織標本を中心にコンサルテーション体制で対応していましたが、細胞検査士の応援も得て、甲状腺細胞診に特化した細胞診断を運営したいと企画しています。検査所でのクラス3、鑑別困難の多い(検体の半数が結論の出ない診断のような例をうかがっています)安全運転のため、あいまいで結論の出ない細胞診に満足されていない方々に、臨床に役立つ診断方式(日本甲状腺診療ガイドラインによる)での細胞診断を提供いたします。甲状腺細胞診に特化した診断を提供できる施設は、当施設以外には、ほぼ皆無と思います。11月スタートを予定しています。ご利用ください。
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甲状腺細胞診『鑑別困難』特集
2015/09/17
甲状腺細胞診『鑑別困難』の特集を私が編集を担当しています J Basic and Clinical Medicineに掲載しました。論文内容を見たり、ダウンロードすることは無料(open access)の雑誌ですので、以下のURL http://sspublications.org/index.php/JBCM/index をご覧ください。中国、米国、イタリア、スイス、日本の著者から12編の論文を投稿いただきました。残念ながら英語の論文で、日本語でも順次これらを紹介したいと思っています。11月には、少し方向は違いますが、第54回秋期大会(名古屋)でシンポジウム『甲状腺細胞診(鑑別困難)を発癌の分子メカニズムから考える』を開催いたします。また来年5月横浜での国際細胞学会でも、『Comparison of different diagnostic systems of thyroid cytology, current and future.』をシンポジウムとして行います。興味のある方はご参加ください。
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Borderline and precursor lesion of thyroid neoplasms: A missing link.
2015/05/14
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甲状腺腫瘍発生では良性と悪性の間があるはずです。前癌病変、境界悪性病変が癌の多段階発癌では知られています。なぜか甲状腺腫瘍分類では、前癌病変、境界悪性病変、非浸潤癌の概念が設定されていません。この欠けた部分は何か?について、Borderline and precursor lesion of thyroid neoplasms: A missing link.に解説しています。どうして今まであまり議論されてこなかったのか不思議に思っています。
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第88回日本内分泌学会総会(東京)で教育講演を担当しました。
2015/05/07
『甲状腺結節取扱い診療ガイドラインの求める細胞診の役割』と題し、2015年4月25日日本内分学会総会で教育講演を担当させていただきました。
特に『鑑別困難に含まれる腫瘍の特色』と『甲状腺腫瘍分類の最近の考え方』について、ニキホロフ教授らによるNIFT(non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features)を紹介しながら、甲状腺腫瘍の発癌機構(WHO分類の概念では)今まで存在しなかった甲状腺癌の前駆病変の位置づけについて紹介させていただきました。以前には癌(被包型乳頭癌濾胞亜型)とされていた腫瘍が、摘出により再発転移が起こらない、甲状腺全摘出+RAI治療は必要ない疾患と訂正され、前駆病変と位置付けられ、NIFT(non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features)と名称が変更されました。これは甲状腺細胞診にも。甲状腺癌の治療方針にも大きなインパクトがある変更です。欧米では甲状腺細胞診鑑別困難に多数のNIFTが含まれており、今まで悪性の確率や、診断精度に癌としてカウントされていました。今までの論文のデータは一から見直しです。甲状腺癌の治療では、欧米ではNIFTは低悪性度の癌として、甲状腺全摘出術に加え、放射性ヨード治療が広く行われてきました。多くの過剰治療(甲状腺全摘による永久的甲状腺機能低下を減らし、術後合併症を減らすため)、放射性ヨード治療による第2の悪性腫瘍による死亡を防ぐことに力点が置かれました。
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