2015年2月

甲状腺癌の過剰診断、過剰診療、過剰治療について。

2015/02/09

現在米国では(文献12参照)、甲状腺癌だけでなく、乳癌、前立腺癌などで、検診による早期発見、早期治療の功罪が問題とされています。早期発見早期治療により救われた生命よりも、治療の必要のない病変(治療しなくても生命予後に悪影響のない病変、近藤誠先生の『がんもどき』など)を、多数発見し、『がん』として治療することにより、
A) 癌死亡の減少に貢献していない。(癌患者は増えたが、癌死亡数は増えていない)
B) 医療費の無駄遣いをしている。
C) 患者を苦しめている。(治療しないで放置しても無害な病変を、お節介にも見つけて、無駄で有害な治療をしている)
などと議論されています。患者の皆様、臨床医の皆様どのようにお考えでしょうか?
患者の立場としては、見つかった病変を治療しないで持ち続けることは、たぶん不安でたまらないでしょう。少数かもしれませんが、本当の癌(治療しないで放置すると進行し、癌のために死亡する)かもしれません。後で後悔することがないように、普通の人は、迷うかもしれませんが、多くの場合、治療を受けようと考えるのではないでしょうか?このホームページの『医療の不確実性』の項を参照ください。
ここでは2点に分けて議論しなければいけないと考えています。
1. 病変の性質を正確に判断し、治療したほうがいいか、治療しないでそのまま持ち続けるかの判断をする。
ここで病理医の役割(本当の癌か癌に類似した無害な病変の区別)があります。
2. 治療が必要と判断した時、治療方法の中から、最も適した(治療効果が高く、治療による不愉快な、悪影響を最小にする)選択肢は何かを考える。
治療の中心を担うのは臨床医ですが、ここでも病理医の示す、病変の性質、病気の進み具合(病期)の診断が、治療方法の選択に重要な参考資料、判断根拠となります。
1. Esserman LJ et al: Addressing overdiagnosis and overtreatment in cancer: a prescription for change. Lancet Oncol, 15:e234-242, 2014.
2. Luster M et al: Differentiated thyroid cancer-personalized therapies to prevent overtreatment. Nat Rev Endocrinol 10:563-574, 2014.

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