48回甲状腺外科学会
第48回甲状腺外科学会学術集会が伊藤病院伊藤公一会長のもと開催されました。病理が関与する内容として、癌取扱い規約の改定が公表されました。ここではべセスダシステムが甲状腺細胞診に採用されると発表されました。加藤、廣川、亀山先生たちと私の4名の病理医が尽力し、日本で独自に発達した甲状腺診断様式を、The Japanese System(日本方式)として命名し、日本甲状腺学会より発表したのですが、残念なことに、これは採用されず、これと異なるべセスダ診断様式(アメリカ様式)を、癌取扱い規約に採用すると公表しました。The Japanese Systemは、写真の伊藤病院の鳥屋先生が尽力された伊藤病院で発達した診断方式です。伊藤公一会長の主宰されたこの学会で伊藤病院の診療の伝統を否定する内容が公表されたのは、何という矛盾なのでしょうか。日本独自の文化、哲学、診療方針を大切にしてほしいと思いました。しかし公表された内容を見ると、
1)嚢胞は、検体不適として再検査するべセスダ様式は採用しない。2)診断名は直訳は分かりにくいので短縮形を用いる。3)濾胞性腫瘍の診断基準を変更する。4)悪性の確率を示さない。5)臨床的対応を示さない。などべセスダ診断様式と呼ぶことができないほどの多数の重要な変更点を加えたものとなっています。1)2)3)については、どちらかというと日本甲状腺学会の診断様式(The Japanese System)に近いと思われます。また4)5)については、The Japanese Systemはべセスダに準拠し悪性の確率を推定し、臨床的対応にも言及しています。2つの診断様式を比較した時、べセスダに近いのはThe Japanese Systemの方かもしれないと思いました。The Japanese Systemは、べセスダとの互換性を意識し、違いを強調し発表いたしました。癌取扱い規約ではべセスダを意識し、名前をべセスダにしたのですが、結果的には似て非なるものかもしれません。